Feb

10

2023

「あの坂をのぼれば」

娘の中学受験、波乱万丈の5日間だった。

その週は有給休暇を取ったから仕事の会議等が今週に集中しバタバタしっぱなし、今日テレワークでちょっと落ち着いたので、ようやくブログを書ける状況になった。


娘も今週から登校。国語の授業で、こんな学習があったようだ。杉みきこさんという方の作品「あの坂をのぼれば」を題材に、次の文章の続きを想像して書いてみましょう、と。

――あの坂をのぼれば、海が見える。
少年はもう一度、力をこめてつぶやく。
 しかし、そうでなくともよかった。今はたとえ、この後三つの坂、四つの坂をこえることになろうとも、必ず海に行き着くことができる、行き着いてみせる。
 白い小さな羽根をてのひらにしっかりとくるんで、ゆっくりと坂をのぼってゆく少年の耳に――あるいは心の奥にか――かすかなしおざいのひびきが聞こえ始めていた。

娘の文章はここから。

――あの坂をのぼれば、海が見える。
 少年は何度も何度も呪文のように唱えた。そして坂を七つほどこえたころ、少年は不安になってきた。
――なんで、まだ海に着かないのだろう。
 だが、海に行くためにひたすら坂をのぼった。すると、ある老人を見かけた。その老人はその坂の近くに住んでいるという。少年は老人にこの近くに海はあるかたずねた。老人はおどろいて、この近くに海なんて無いと答えた。少年は、今までの努力が無駄だったことのショックと、疲労で倒れそうになった。だが、家に帰らなければいけないため坂を下った。フラフラと歩いているとチョウを見つけた。少年がどうにでもなれという気持ちでチョウについて行くと、そこは一面の花畑だった。少年は花畑の美しさに言葉を失った。だが、もう日が沈み始めている。少年はなごりおしく思いながらも坂を下った。
――海は見られなかったけど、花畑を見つけることができた。努力すれば必ず良いことがあるのかもしれない。と、少年は思った。
02102023.jpg

昨夜読んだ時に、はっとした。

「七つ」というのは、1月も含めた受験回数のことを指しているんだろう。

2/1の前日、娘は38.8度の発熱。危うく全日程でDNSになる可能性もあった中、娘は全身全霊を注いで走り切った。

当日に熱は下がったものの、体の怠さが続き食欲が全くなかった。もうフラフラの状態で、途中で引き返そうか迷ったこともあったし、実際に泣く泣く受験を断念した日もあった・・・。

試験を受けられないどころか家で直前に勉強すらできずベッドで体力回復を図ることしかできないほど体調不良に陥り、不安と恐怖に押しつぶされそうになりながらも、朝になれば這い上がり、試験から帰ってきてからバタンキューという数日間。

昨年の世界陸上で、世界最速夫婦ランナーと新谷選手がコロナ棄権。あの川内選手でさえスペインの大会をコロナ棄権。もちろん彼らをディスるつもりはないし、娘が感染したわけでもないのだけど、どんなに気を付けていても生きていれば体調は崩す。

僕だってそうだ、体調が整わないとか脚の故障や違和感で本命レースにピークを持っていけないなんてことはザラにある。 

時にどうしようもならないことで11歳の娘に絶望を味わわせてしまったことを、僕は一生忘れられないかもしれない。

「海」には辿り着けなかったかもしれないけど、その代わり言葉を失うほど美しい「花畑」を目にすることができた。そう思えている娘に、僕は少し救われている。

そして、日が沈めばまた昇るように、その場に立ち止まることなく、前を向き始めている娘。

努力の大切さを学んだ娘。

娘が次はどんな坂に挑戦し、何に辿り着くのか、これからも楽しみだ。


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Tom

JUNさんありがとうございます、ホントその通りですよね。受験すると自ら言い出してからは一度たりともブレることなく、わが子ながらよく頑張ったなと感心しています。

親の伴走が必要なのは中学受験の難しさでもあり、伴走できるというのは一緒に成長を感じられる貴重な経験でした。

子育てがひと段落したというのに、海外に転職・単身赴任という道を選び、常夏の地で走り続けてもいるJUNさんは、遠く離れていても立派なお父さん!僕も見習います。あ、海外にはもう行かないですけどね(笑)。

02

12

16:22

Tom

キミ兄さん、心温まるコメントありがとうございます。ご心配おかけしました。

仰る通り中学受験はゴールではないし通過点ですから、気持ちを切り替え、海の向こうにどんな景色が広がっているのかを想像しながら進んでくれればと思っています。

マラソンに加えてゴルフの練習をコツコツと積み上げて新しい景色を見ようとされているキミ兄さん、応援しています!ご夫婦で楽しめるというのも良いですよね。

02

12

16:20

JUN

Tomさん、この数週間に向けて娘さんが数年間積み上げた過程や努力は十分な財産ですね。
ご家族も長らくの伴走、お疲れ様でした。
娘さんにとって心強く優しい伴走者でしょうね。

02

11

22:28

キミ兄

ブログが更新されないので心配しておりましたが様子が分かって良かったです。お嬢さんの作文、妻と一緒に拝見しました。色々な想いがおありだったでしょうが、今の自分を正面から見つめての文章は、読んでいて胸が締め付けられました。妻は文章が上手で驚いたと言っておりました。

中学受験が仮に海だとしても、海は終着点では無い。今海が見られなくても、次はきっと海の向こうのもっと良い景色が見られるはずです。なんなら私のような年齢の者でさえまだ見ていない景色をもっと見たいと思っています。見ることをあきらめた景色もあったからこそ、見ることのできた景色は鮮やかになりますよね。

今この文章が書けるお嬢さんはTomさんの誇りですね。この経験がお嬢さんのこれからの人生を豊かなものにすることを祈っています。お嬢さんもご家族も大変な1週間、お疲れさまでした。

02

11

17:20

Tom

トマスさん、ありがとうございます。つくばでお話したことを今でも覚えていて気にかけてくださっていて、それだけでも嬉しいのに、こうしてブログにコメント頂いてとても心温まる感じでいます。

海外で働くことの大変さ、あれは経験した人でないと決して分かりませんよね。その苦労を共有し、ランナーとしての苦楽も分かり合える方からの励ましは、本当に嬉しいです。

線引きは難しいですけど、子どもは子ども、自分は自分での精神で(笑)、一緒に頑張りましょう(^^)

02

10

22:10

トマス

娘さんもTomさんもご家族の皆さんもお疲れ様でした。
色々な思いがあるのだと思いますが、いつか「あの時はあれで良かった。」と思える日が来ることを願っています。

僕自身も受験には2度失敗(志望校に受からなかった)していますが、今は「あの経験のおかげで今の自分がある」と、なくてはならない出来事だったと感じています。

娘さんの文章に涙が出ました。11歳であんな風に受け止めて、言葉にする子は、きっとこれからの人生を自分で切り拓いていける強さを得たんだと思います。

うちの子にも見習ってほしいです(笑)

02

10

18:38

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プロフィール

Tom

Tom
1975年生まれ 48才
--------------------------------------------------------
・1/2011 ラン開始
・11/2012 サブスリー達成
・3/2015 サブ55達成
・11/2017 サブ50+キロヨンカット達成
・11/2019 サブ45+エイジレコード達成
・11/2022 サブ40達成
・毎年PB更新中

自己ベスト

・フルマラソン
2:39'45 (11/2022 つくば)
・30km
1:52'32 (11/2022 つくば通過点)
・30km練習
1:52'07 (9/2022)
・ハーフ
1:16'23 (1/2022 ハイテクハーフ)
・10km
35'10 (10/2021 月例赤羽)
・5km
16'22.4 (7/2023 MxKディスタンス)
・3km
9'53.1 (7/2023 MxK通過点)
・1500m
4'25.4 (6/2023 MxKディスタンス)

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